DAIWA

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SPECIAL TALK

DX競争優位推進ラボ

~モビリティデータを活用したDX新潮流~


■Vol.1■

新しい付加価値で業界の常識を変える

~旧来のタクシー業界ビジネスモデルを超える3つの新コンセプト~

奥田氏(以下、敬称略)本日は小山さんから、タクシー業界におけるデータやデジタル技術を使った新しいビジネスのお話を伺えるということで、楽しみにしていました。大和自動車交通様と言えば、タクシー業界では4強の1角を占め、東京都内で稼働台数は2100台、コロナ前では年商規模160億円を超える企業です。業歴82年の老舗でタクシー業界というと、どうしても「保守的」というイメージを持たれがちと思いますが、そんなイメージを覆すような様々な新しいチャレンジをされているお会社とうかがっています。よろしくお願いいたします。

小山)そうですね。確かにタクシー業や老舗というイメージに囚われない新しい取り組みをしているつもりです。その中でも本日は、3つの新たなビジネスモデルについてお話ししようと思ってきました。 まず始めに「乗車時間に付加価値を」というところからお話しさせていただきます。 

従来のタクシーのビジネスモデルは、「お客様を乗車して目的地まで送る」ことでした。したがっ て、タクシー会社は運賃収入が唯一の収入源と考えられてきました。ちなみに、弊社の場合は 2019年コロナ前の1回辺りの乗車単価は1840円、乗車時間に直すと約18分です。 そこで弊社では、この「お客様が乗車している時間」に新たな付加価値を提供するビジネスモデルに取り組みました。 簡単に言えば、タクシー車内にタブレットを設置してお客様が乗車している時間に広告を流し、広告収入を得るビジネスです。これを可能にするため、S.RIDEの新たなビジネスパートナーとして 広告ビジネスのノウハウを持つ株式会社ニューステクノロジー社と提携致しました。スタートして3 年あまりですが、S.RIDEに参加する1万台にこのタブレットが設置されています。1か月の広告表示回数は1億回を超え、広告枠も2か月先まで満稿状態となっています。 

また、こちらのタブレットは各種QRコード決済、さらにはS.RIDEアプリに登録したクレジットカードでのネット決済にも対応しており、利用者の利便性向上にも貢献しています。

奥田)確かにタクシーの乗車中に広告が流れているとお客さんは必ず目にしますし、広告主側にもメリットはありそうですね。近年現金を持つ人も少なくなってきているので決済方法に色々なオ プションがあると非常に便利だと感じます。 

小山)2つ目は、「空車時間に付加価値を」です。 タクシーの営業の流れとしては、例えば12分間乗車し、25分間空車で走行、8分間乗車、18分間走行、というように実車と空車を繰り返します。当然空車の間はいくら走っても収入はありませ ん。タクシーは平均して1日あたり17~19時間営業していますが、そのうちの53%が空車で走っている状況です。この時間に何か収入を得るビジネスモデルはないか、と考えてスタートしたのが、「タクシーの窓を利用する」ということです。 

写真をご覧になっていただくと、マンガ・アニメで人気の「ONE PIECE」の広告が出ているのが見えるかと思います。お客様が乗っていない空車で走行している時に、タクシーのリアウィンドウに写し出されるものです。このガラスはAGCが開発したグラシーンという、特殊なスクリーンフィル ムを2枚のガラスに挟み込んだもので、自動車の窓専用の窓ガラスとして求められる安全性、耐 久性も確保しながら、高画質な広告を投影することが可能になりました。こちらの「ONE PIECE」 広告では、コミックス99巻発売に合わせて車両100台にファンなら分かる名言や名シーンを映し ております。

奥田)窓に広告を「貼る」のではなく「投影する」というのは斬新ですね。さらに「ONE PIECE」とな ると人気マンガでもありますし反響も大きかったのではないでしょうか?

小山)そうですね。SNS上では、ONE PIECE公式サイトから「窓ガラスにルフィが映ったタクシー が都内を走っているぞ。近未来だ。見つけたらシェアしてくれ。」との投稿もあり、ファンの方から も「タクシーがONE PIECE仕様になっている」「ワンピ車両に出会えた、奇跡」など数多くの投稿 がありました。雑誌、テレビ、新聞等でも取り上げられまして、良いスタートがきれたと思います。 続いて3つ目のビジネスモデル「移動時間を、体験時間に」ということで、さらに広告の価値を上 げるサービスをご説明します。

奥田)お聞きしていると、それぞれの新ビジネスにしっかりしたコンセプトが付いているのが素晴 らしいです。 

小山)ありがとうございます。一言で言い表すキャッチ―なコピーをつくるのは大変でしたが、その甲斐がありました。 これはディズニープラスさんと昨年実施したディズニープラスタクシーというサービスです。車両をフルラッピングにして、後ろのドアにはディズニーのキャラクターを6種類デザインしました。初日に渋谷ハチ公交差点でディズニープラスタクシーを走らせ、プロモーション撮影をした時の写真では、信号待ちをしている多くの方々がスマホを手に取り撮影をしている様子も映っております。

 ディズニープラスタクシーには後部座席のタブレットでの通常の広告配信を止め、ディズニープラ スタクシーに乗らないと見れないディズニーの秘蔵映像のみを放映しました。さらに東京のタク シー47618台の中の100台しかないディズニープラスタクシーに乗った証として、乗車した全ての お客様にポストカードを配布しました。また、右側に、QRコードを読み取り、抽選でディズニープラ スの素敵なプレゼントが当たるなどの特典も付けました。 

配車アプリとの連動の仕掛けもあります。S.RIDEのアプリユーザー画面の上に、ディズニープラ スの青いアイコンを表示してボタンを押すと、100台しかないディズニープラスタクシーが呼べるよ うにアプリ連携を行いました。S.RIDEのアプリユーザーにならないとディズニープラスタクシーに乗れないこともあり、新規ユーザーのダウンロード数アップにも繋がりました。 

タクシーの売上効果としては、アプリの配車件数、通常のアプリの配車件数の2.5倍、1乗車辺りの平均単価も、コロナ渦で売上が減少している中、通常のタクシーは1回辺りの平均単価が1600 円のところ、ディズニープラスタクシーでは1回辺りの単価が2850円とドライバーにもメリットが出ています。 SNS上の反響も非常に好意的でした。インフルエンサーからは「100台しかない奇跡のタクシー に乗れた」、「車内のシートもディズニー仕様でかわいい」といった投稿、そして一般ユーザーから も「ディズニープラスタクシー2種類ゲット」や「美女と野獣のマーブル仕様に乗れた、ラッキー」など沢山の画像も上がり、クライアントのディズニープラスさんも反響の大きさに驚いていたようで す。この広告はテレビは雑誌の広告と違い、広告を見た人の反応効果をタイムリーに確認できるので、新しい広告ビジネスの可能性を感じております。今後は100台からさらに拡大していく予定 です。

奥田)タクシーとしては売上があがりますし、お客さん側もディズニータクシーに乗れるレア感を味 わえたりなど双方にとって嬉しいですよね。「どうすればタクシーを利用する人の興味を惹くことができるか」を考え抜かれてビジネスモデルを作っている印象です。 



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