DAIWA
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SPECIAL TALK
DX競争優位推進ラボ
~モビリティデータを活用したDX新潮流~
■Vol.2■
ビッグデータとAIがもたらした目に見える経営効果
~売上増に留まらないドライバーの意識改革~
奥田)さて、続いては「AI」に関する取り組みについてもお話をお聞きしたいのですが。
小山)承知しました。ビッグデータを活用したAI需要予測についてお話しさせていただきます。弊社では、タクシー全車にSONYのAI需要予測サービスを搭載しました。機能としては主に6つです が、すべてがリアルタイム対応、かつ数時間後の予測も出せる、となっています。
奥田)予測の精度はどのくらいでしたか?また、AI導入によって売上としてはどのような変化が あったのでしょうか?
小山) 2000人のドライバーデータを解析した結果、エリアのメッシュ予測が当たったのが82%、ホットス ポットの実車化奏功率が12月が65.3%、1月は68.8%と、非常に良い数字を出しています。
売上への効果も、アプリを起動している状態では起動していない状態に比べ、6.8%伸びたという データがでています。機能別に売上効果を見ると、「高需要エリア検索」機能を使った場合、ベテランですと5.2%、新人では16.6%売上が上がっています。電車が運休になったりした時に出る 「特需通知閲覧」ですが、こちらはベテランも新人も閲覧したドライバーは閲覧しなかったドライ バーに比べ10%ほど売上が伸びている。「イベント情報閲覧」ではベテランと新人では売上増効果に差が出ておりますが、これはベテランドライバーの方がイベント会場がどこにあるかとかが分かっているので、その差かなと思っています。
奥田)なるほど、AI需要予測アプリを使うか使わないかだけでも売上の差はやはりでてきます ね。一方で、データ主導での価値創出はドライバーさんがナビから指示で動くという話になると思うんですが、開発の仕方を間違えるとドライバーのニーズとは外れたものがでてきてしまうということがあると思います。どのようにすり合わせをして、ドライバーのニーズとデータ開発側が実際 に使われるシステムを作ってきたのでしょうか?
小山)全車両に搭載したのが昨年の4月、実用化まで1年の実証実験を繰り返しました。最初は 30台のタブレットと、選抜された60名のドライバーからスタートして、さらに3か月後に50台、100 台、500台と増やしながら進めていきました。その中で、選抜された60名のドライバーとSONYの開発メンバーと2、3カ月に1、2回ドライバーたちを集めてヒアリングを行いました。仰る通り、 SONYの開発メンバーもタクシーのことはよく分かっておりませんでしたので、例えば先ほど支援通知はプッシュ通知で来たら、聞き逃したら情報を逃すのでナビの地図、例えば山手線の新宿か ら池袋から電車が止まっているんだったら、そこを黄色く色を変えてほしいとか、SONYさんの方が乗務員からこれをしてくれあれをしてくれというのを聴きながら進めて行きましたので、1年間 やった結果実用的なものになっていったのかなと思います。
奥田)ちなみに先ほど選抜したドライバーでまずは実証を始めたとの事だったんですが、ドライ バーを選定したときの条件はどのようなものだったんでしょうか?
小山)最初は20代30代のスマホを使う世代を中心に、さらに協力的なドライバー、こういう話をしたときに興味を持ってもらったドライバー、200人ぐらいに説明して、そこから手を上げたのが選抜隊でスタートしました。
奥田)非常に丁寧に会社の中で説明をしながら協力者を募っていったという工程が見て取れま す。使っていくうちに、新しい有効活用事例が生まれてくる、ということもかなりありそうですね。
小山)有効な活用方法に関しては、SONYの開発メンバーと一緒にドライバーからヒアリングを し、特にこのアプリを使って売上効果が高い人にヒアリングを行っています。電車の運休の通知 の利用や、苦手なエリアから自分の得意なエリアへ行く際のおすすめルートを使うとか、さらにイベントも東京都内1000人以上集まる所は終了時間が出ますが、チケットの客単価が高い所はタ クシーを利用するお客様が多いという結果が出ているので、こちらを活用するのも有効な方法で す。
奥田)なるほど、AIの情報を有効活用することによって効率的なタクシー走行に繋がりますね。そ の一方で、実際のAIの新しいサービスを必ずしも全員が受け入れてくれるわけではないのかなと 思うんですが、ドライバーに浸透させていく上でどのようなことをやられたんでしょうか?人によっ てはAIに反発したり、自身の勘の方が頼りになるということで敢えて使わないという選択肢もあり 得るのかなと思うんですが、ここをどう使う方向にもっていったのかお聞かせ下さい。
小山)確かに全車両でスタートした時には、実験段階で参加していないドライバーの方が多かっ たので、やはり4月スタートに向けて3月から乗務員用のAIマニュアルを作ったり、研修会を繰り 返し行ったりしたんですが、マニュアル見ただけで読むのも嫌だというドライバーもいました。そういう中で現場にタブレットのデモキーを置いてとにかく触ってもらうなどを行いました。さらに、使用する上で、空車の情報があったら色が変わったり、ポイントが出たりすると、ナビが見にくいと 言う60代ぐらいのベテランドライバーからの意見もありました。これもSONYさんの方で空車だけを見れる設定や、メッシュだけを見れる設定とかを選べるような追加機能も付けていただきました。他にも、スマホを持っていればURLから使い方の動画を見てもらい興味を持たせるなど。 我々も当然企業なので、それなりの投資をしていますからこれを全ドライバーに使ってもらわないと意味がないので、料金メーター機も最新モデルに変えてメーター連動させて、空車になったら自動的にAI画面に切り替えるというのを今進めているところです。
奥田)色々な方の意見を入れて機能を増やしていくとどんどんボタンが増えて複雑になってしまうこともあるかと思いますが、機能の引き算とかもやられているんでしょうか?また、設定で人に よって見れるものをコントロールしているということなんでしょうか?
小山)当然、この機能は要らないとか、この機能は使うとか、はドライバーによって違うので、それぞれにあった設定にしています。 カスタマイズという点では、経験のないタクシードライバーの場合には、現場に配属後にそれぞ れに空車になった際の行先を設定します。例えば、空車になった際にAさんは六本木に、Bさんは新宿に、などと設定をし、空車になったら全てAIの通りに走るなどというところから始めていま す。現在は赤坂、渋谷、新宿、池袋などを何人かの新人グループに5人ずつぐらい同じ場所を設定して、1か月走った結果、どこを設定した新人が乗車率が高かったか、違いがどうでるかを見るためにデータ解析もやっています。 他には、ベテランドライバーと新人ドライバーでルートを変えたりしていますね。例えばベテランがいつもは通らない不得意な場所までお客さんを乗せた際に、その地点から得意なエリアまでの ルートを出したりします。色々なルートを提案して、ベテランにはこういう使い方、新人ドライバーにはこういう使い方、というのを説明しています。