福祉タクシーと聞けば、高齢者の介護を連想される人も多いでしょう。でも、福祉タクシーは主に身体に障がいをかかえる人を運送するためのものです。
全国で障害者手帳を所持する人は、500万人とも600万人ともいわれています。それに対し、全国のタクシー会社が保有する福祉タクシーの数は、たったの5,000台程度。まったく足りていない状況ですが、裏を返すと「福祉タクシーの台数が急増すれば、多くの乗務員が必要になる」ということです。そこで今回は、いま身につけておきたい福祉タクシーについてまとめてみました。
福祉タクシーは、自力での外出が困難な人に対し、病院や買い物などの送迎をサポートするための車両です。福祉タクシーの利用は、主に身体障がい者がサービス対象になります。よって、高齢者というだけの理由では、利用できない場合も。また、福祉タクシーには電動リフトが備わっているため、車椅子やストレッチャー(寝台)ごと運送することが可能です。車内には付添者用のスペースが確保されているほか、点滴などをしたまま乗車することもできます。
福祉タクシーは、よく介護タクシーと一緒にされがちですが、実は大きな違いがあります。それは、福祉タクシーが介護保険の適用外であることです。介護保険が適用されないため、乗務員は介護に関する資格が必須ではなく、目的地を問わず旅行や観光で利用することができます。
それに対して介護タクシーは、介護保険が適用される場合は介護保険タクシーと呼ばれ、乗務員は介護職員初任者研修の資格が必要です。また、要介護認定者を乗車させることが介護保険タクシーの条件になるため、主に通院以外は介護保険の適用範囲外と判断され、介護タクシーと呼ばれます。
福祉タクシーの乗務員は介護に関する資格がなくても乗務できますが、福祉タクシーを管轄する運営側は同様ではありません。たとえば、福祉タクシーを5台以上保有すると運行管理者に介護ヘルパーの資格が必要となり、また整備管理者についても同じ条件がつきます。
前述した通り、福祉タクシーは原則として介護保険が適用されません。ただ、介護事業所などが作成するケアプラン内に「福祉輸送」の記載があれば、介護保険の適用が認められます。その際は依頼する介護事業所などが、福祉タクシーの営業許可を受けておくことが必要です。また、個人でも開業が可能で、「NPO法人日本福祉タクシー協会」では開業支援も行っています。
福祉タクシーにおける運賃は、3種類のなかから選べる「自動認可運賃」を基に算出します。自動認可運賃は「距離制運賃・時間制運賃・時間距離併用制運賃」に分かれ、各運賃には「上限・中間・下限」というランクが設定されています。
※金額は東京都の一例
福祉タクシーのサービス提供のメリットを知るためには、実際の利用傾向を把握する必要があります。東京大手タクシー会社の「大和自動車交通」では、主に冠婚葬祭や旅行、通院などで福祉タクシーを利用する人が多いそうです。以下に利用内容をまとめてみました。
上記の利用状況で共通する点といえば、ほぼ日中での利用が考えられることです。そうすると、福祉タクシーの場合は、通常のタクシーでは必須の深夜勤務がなく「日勤での稼動が主な活動時間」といえるでしょう。これなら隔日勤務や夜日勤がないため、共働きの女性乗務員などには好都合かもしれませんね。
福祉タクシーの乗務員は、「お客さまの介護・介助ができない」ことを理解しておくことが大切です。福祉タクシーの目的は、お客さまの介護ではなく「主に身体に障がいをかかえる人を運送する」こと。よって、一般のタクシー同様、介護の資格は求められず、理由なくお客さまに接触することもできません。
また、福祉タクシーには「障害者手帳を提示することで市町村が福祉タクシーの運賃を一部負担する」という制度があります。その際、市町村によっては福祉タクシー券を発行する場合がありますので、乗務員は制度の詳細を把握しておく必要があるでしょう。
福祉タクシーのノウハウをもっと知りたい・身につけたいのであれば、タクシーの運営だけでなく福祉事業を一緒に展開する企業に相談してみるのも一手です。
参考:
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