超高齢社会の到来、訪日外国人の増加など、社会情勢が大きく変化する日本で、いま、タクシー会社にできることは何でしょうか。2020年の東京オリンピック、2025年問題を目前にしたタクシー業界の取り組みについて紹介します。
近年、訪日外国人の増加から、外国人がタクシーを利用する場面が増加しています。また、2020年の東京オリンピックに向かって、今後も外国人のタクシー利用は増え続けるでしょう。タクシー業界はいま、訪日外国人のお客さまを獲得し、さらに柔軟な対応を持って国際社会のなかで生き残るためにも、さまざまなアイデアを生み出して取り組んでいます。
最近ではタクシードライバーが英語を話し、観光タクシーとして訪日外国人に観光案内をするケースが増えきました。タクシードライバーが通訳案内士の資格を持つなどして、その活躍の幅を広げています。
英語だけでなく、さまざまな言語に対応した多言語音声翻訳システムのアプリが開発されています。iPadを車内に設置し、翻訳機能の利用だけでなく、画面を使って目的地の映像などを流すなど、各社、お客さまに楽しんでもらえるよう工夫をしています。このような訪日外国人に向けたタクシーサービスは、今後ますます盛んになるでしょう。
日本は現在、少子高齢化が進行しており、2025年には約800万人が75歳以上の後期高齢者となると予測され、「2025年問題」と呼ばれています。この800万人の人々は、1947年から49年の第一次ベビーブームに生まれた団魂世代の人たちのことです。タクシー業界は、今後、高齢者のタクシー利用がますます増えることを見越し、超高齢社会に向けたさまざまなサービスを検討しています。
通常であれば、タクシーのお客さまは健常者であり、自ら乗車することが可能ですが、「福祉タクシー」「介護(保険)タクシー」は心身の不自由な人、また高齢者に利用してもらうためのサービスです。
介護保険タクシーとは、介護保険を使用したタクシーのこと。介護保険タクシーを利用するにあたっては、いくつかの条件を満たす必要があります。
さらに自宅、有料老人ホームやケアハウス、サービス付きの高齢者住宅に入居している人が対象です。また、通常の福祉タクシーと違い、利用する際の目的も決められています(通院、金融機関の手続きや引き落とし、選挙投票、利用予定の介護施設への見学など)。
介護保険タクシードライバーは、介護職員初任者研修の資格が必要です。また、介護保険を使わずにこちらのタクシーサービスを使用する場合は、介護タクシーと呼ばれます。
福祉タクシーに関しては保険適応外であるため、費用は全て自費になります。しかし、通院以外にも、買い物、趣味の用事、冠婚葬祭など多岐にわたって利用が可能です。
さまざまなタクシー業界の取り組みを紹介しましたが、ほかにも、多方面にわたりタクシー会社が取り組んでいることがあります。
大和自動車、日本交通など全6社で利用できる配車アプリが登場しています。「スマホdeタッくん」は東京23区、武蔵野市、三鷹市で利用が可能です。スマホがあれば誰でも使用することができ、使い方も簡単です。配車する場所を地図上で指定するだけでタクシーが来るようになっている便利な仕組みです。乗務員は、依頼のあったユーザーの位置がカーナビ上に写し出され、ルートも表示されることから、両者にとってシンプルな作りが特徴的です。さまざまなアプリがある中で、こちらのアプリは配車依頼に特化したものとなっています。
最近若者の車離れがいわれて久しいですが、妊婦、ママをサポートするタクシーがあります。車を持っていない女性が気軽に利用できるシステムになっており、24時間365日対応で、多様な場面に利用してもらえるよう工夫を重ねています。たとえば、妊婦の定期検診、買い物の送迎、陣痛時などに利用することができるサービスです。タクシードライバーは助産婦から研修を受けており、緊急時にも対応できるよう訓練を積んでいます。
トヨタが現在共同で開発しているタクシーのデザインは“おもてなし”の心を反映したユニバーサルデザインです。低床化と大開ロスライドドアによって、高齢者でも乗り降りしやすく、車椅子などの乗車も考慮した広い室内に設計されています。周辺システムについても、安全装置を充実させ、お客さまの利便性を重視し、多言語対応についても検討しているようです。ほかには、交通や道路環境情報を分析するなどして、タクシーの自動運転開発も進んでいます。
時代は超高齢社会、国際社会へと移っています。そのなかで、いかに時代に沿ったサービスを提供していけるのか。タクシー業界はそのためにさまざまな取り組みを行っています。未来を見据えたサービスも、すでに利用が始まっているサービスも、私たちの生活に深く関わっているものではないでしょうか。
参考:
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