年中休みなく、早朝から深夜まで働いているイメージをもたれがちなタクシードライバーですが、実際のところはどれくらいの時間働いているのでしょうか? 案外知られていないタクシードライバーの働き方には、実はきちんとした決まりがあり、健康に配慮した環境が整えられています。
今回は、ドライバーのシフトや休憩時間、また勤務時間について詳しく紹介します。これからタクシードライバーを目指す人にとっても、有益な情報になるのではないでしょうか。
タクシードライバーの仕事はお客さまを乗せて目的地まで運ぶことです。最終の電車やバスがなくなったあとは頼れる移動手段がタクシーだけということもあり、深夜でも仕事をしなければならないというイメージがあるかもしれませんね。しかし、だからといってタクシードライバーが無理のあるスケジュールで働いているわけでは決してありません。では、どのような勤務体系になっているのでしょうか。
安全運転のため、タクシードライバーの1日の乗車運転時間は、厚労省により厳しく定められています。それによると、1乗務の最大拘束時間は休憩時間を含んだ21時間以内、1ヶ月の拘束時間は262時間以内です。これに違反した場合はタクシー会社にペナルティが課されるため、会社側も時間管理には慎重に取り組んでいます。
また残業や過度な運転時間がタクシードライバーの健康を害し、お客さまの安全にも支障をきたすということで、タクシー業界の協会も同様に、勤務時間、休憩時間の管理を徹底的に行っています。このため、さまざまな職種のなかでも、とりわけタクシードライバーの勤務時間は厳格に管理されているのです。
タクシー会社によって異なりますが、多くの場合、シフトは「昼日勤」「夜日勤」「隔日勤務」の3つがあります。「昼日勤」は主に朝の7時から16時まで、もしくは朝の8時から17時までという働き方です。お客さまはビジネスマンや病院、住宅に向かう高齢者が中心になります。
一方、「夜日勤」については17時から翌朝2時までの勤務になり、深夜になるにつれて繁華街からの終電を逃したお客さまが多くなります。また最近では、この2つの勤務体系を採用しているタクシー会社は少なく、前者の「昼日勤」と「夜日勤」を組み合わせた「隔日勤務」を取り入れているところが多いです。「隔日勤務」の場合は、朝の8時から翌朝の2時までの勤務になります。昼と夜のドライバーが1名ずつ必要になる「昼日勤」や「夜日勤」とは違い、1人のタクシードライバーで朝から深夜まで対応するところが特徴的です。
「隔日勤務」のシフトを見ると、1日16時間労働のように考えてしまいがちですが、実際はタクシードライバーの体調を整えるために、勤務日数や休日をしっかりと考慮したシフトが設けられています。
大和自動車交通の場合は「隔日勤務」を取り入れています。具体的には出番、明番、公休が設けられており、出勤に当たる出番の勤務時間は午前8時から翌朝の2時までです。明番は、勤務が終わった翌朝2時以降から2日後の8時出社までの休養日を指し、公休は一日中休みとなる日を意味します。シフトとしては、出番と明番を2回繰り返したあと、公休が1日というスケジュールです。出番、明番、公休について1ヶ月単位で見てみると、出番が約12回、公休が6回から7回あることになります。また連続の公休をとることもできるため、普通のサラリーマンよりも休日が多いというメリットがあるでしょう。
シフトによっては、1日の拘束時間が長くなる場合もあるタクシードライバー。運転時間と休息時間の割合など、実際はどのような予定で勤務しているのでしょうか?
たとえば、前述の「隔日勤務」の場合、午前8時から勤務が始まります。通常は、少し早めに出勤して、出庫前の点検やアルコールのチェックなどを行います。出発したあとは順次お客さまを乗せて走行。その間に、自分の体調やお客さまの状況に合わせて休憩をとります。1日の拘束時間が長いため、昼食休憩を含め、休憩時間は3時間設けられています。この休憩時間については、お客さまを乗せるタイミングなどに合わせて個人で自由に決めてよいことになっており、実際、休憩をしながら客待ちをするタクシードライバーもいるようです。
あまり知られていないタクシードライバーの勤務日数についてですが、どのタクシー会社も徹底して勤務管理が行われているため、実はブラック企業が少ない業界でもあります。公休には、自分の趣味や旅行などを楽しむ人も多いようです。
タクシー会社は一般的に想像されがちな働き詰めの状態ではなく、管理されたスケジュールのなかで、働きやすい環境が整っているようです。また、きちんとした勤務体系で無理なく働くことができることから、最近では女性のタクシードライバーの活躍も目立ってきています。これからタクシードライバーを目指す人は、ぜひこちらを参考に希望を持って挑戦してみてくださいね。
参考:
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