タクシードライバーとして働くために、かならず手に入れなくてはならない資格は何だと思いますか? まずは運転免許ですよね。二種免許がすぐに浮かんだ人は多いかもしれません。
もちろん運転免許を持っていることは必須ですが、実はもうひとつ、タクシードライバーに必要な資格があります。それは「地理試験」の資格。これをクリアしないと、都心部などの特定の地域でタクシードライバーとして働くことができません。
あまりなじみのないこの資格、いったいどんなものなのでしょうか? ここでは、地理試験の概要をわかりやすく説明します。
地理試験は、タクシードライバーに必要な知識を持っているかを試すもの。特定の地域を運転するタクシードライバーに必要な資格であり、対象地域は東京都(23区、三鷹市、武蔵野市)、神奈川県(横浜市、川崎市、横須賀市、三浦市) 、 大阪府(大阪市、美原区以外の堺市、和泉市、池田市、吹田市、豊中市、泉大津市、高槻市、守口市、茨木市、八尾市、箕面市、門真市、摂津市、高石市、東大阪市、三島郡、泉北郡)です。
試験は「当該指定地域に係る地理」と「タクシー事業に係る法令、安全及び接遇」の2科目からなる筆記試験で、各所轄のタクシーセンター(東京都、神奈川県、大阪府など)で行います。受験料は2科目6800円(1科目3400円)です。
地理試験に一度合格すれば、タクシードライバーとして勤務している間は再受験の必要がありません。タクシードライバーを辞めたあとは、辞めた日から2年間有効です。2科目のうちどちらか1科目のみ合格した場合は、次の受験で科目合格通知書の写しを添えて申請すると、合格した科目の試験は免除となります。
「当該指定地域に係る地理」は、60分の所要時間で40問出題されます。正解率80%以上(32問以上)が合格ライン。基本的な問題内容は、道路名、地名、駅の場所、各名所、旧跡、公園の場所など、地理の知識を問うものです。
「タクシー事業に係る法令、安全及び接遇」は、60分の所要時間で45問出題されます。こちらも正解率80%以上(36問以上)が合格ラインです。輸送の安全およびお客さまの利便の確保に関する試験として、「法令」「安全」「接遇」の3項目に分かれており、各項目の内容は下記のようになっています。
「法令」の項目:道路運送法、タクシー業務適正化特別措置法、そのほかの関係法令(道路交通法など)に関連すること
「安全」の項目:指定地域における事故の発生状況、交通事故の防止および事故発生時の措置などに関連すること
「接遇」の項目:タクシードライバーの基本的な心構えや、お客さまに対する接し方、高齢者・障がい者などの乗車・降車の対応の仕方など
ではここで、東京タクシーセンターの過去問題と名古屋タクシー協会の試験問題集から1例を取り上げてみましょう。
次の首都高速出入口がある首都高速線を解答群の中から選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
<首都高速出入口>
1. 空港西
2. 芝公園
3. 中台
4. 永福
5. 平井大橋
<解答群>
a) 都心環状線
b) 4号新宿線
c) 中央環状線
d) 川口線
e) 5号池袋線
f) 1号羽田線
g) 7号小松川線
わかる問題はありましたか?
正解は、1.空港西―f).1号羽田線、2.芝公園―a).都心環状線、3.中台―e).5号池袋線、4.永福―b).4号新宿線、5.平井大橋―c).中央環状線でした。
問題内容が正しい場合は〇を、間違っている場合は×を解答してください。
1. (法令問題)タクシーの車両には、地方運輸局長の指定する規格に適合する地図を備えておかなければならないが、カーナビゲーションシステムが装着されている場合には、そのような地図を備えておく必要はない。
2. (安全問題)酒酔い運転では、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。
3. (接遇問題)「空車」を表示しているときは、正当な理由なく乗客の申し込みを断ることができない。
正解は、1.×(カーナビゲーションシステムの有無にかかわらず、地図の備え付けは必要)、2.〇、3.〇でした。あなたはいくつわかりましたか?
地理試験の合格率は50%前後といわれており、1回で合格することは難しく、多くの人が複数回受験して合格に至っています。効率的に準備をし、何度でも諦めないことが地理試験に合格するカギです。タクシードライバーになるための第一歩として、万全な対策を行いましょう。
なかにはかなりニッチな知識が必要になる問題もあり、出題の幅が広いので、やみくもに勉強してもなかなか成果が出ません。過去問題や地理試験用の問題集を繰り返し解き、出題傾向を理解することが大切です。地域ごとに道路、各施設、交番、駅などを覚えていき、自分の苦手な部分と得意な部分を把握したうえで、弱点克服に努めましょう。
試験には地図が出題されるので、地図を早く正確に読めることは強みになります。実際にタクシードライバーとして働く際には地図を理解しなければならない場面が多くありますので、将来のためにも、さまざまな地図を読んで見慣れておくことは自分にとってメリットとなるでしょう。
最後に、一番重要なのは諦めないことです。1回目で受からなくても、多くの人が再度受験し合格を手にしていることを考えれば、チャンスはあなたの手にもあるはず。何度も問題を解き、わからなかったところを復習して地道に勉強を続ければ、かならず合格できる試験です。
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