タクシー初乗り値下げによる「ちょい乗り」

東京23区と武蔵野市、三鷹市でタクシーの初乗りが2km730円から1.052km380~410円に改定されました。値上げの情報ばかりを耳にする昨今ですが、タクシーの値下げは戦後初めてのこと。ではなぜタクシーの初乗り料金が値下げされることになったのでしょうか。新しい料金体系と値下げの理由、その目的についてご紹介します。

なぜ国土交通省は初乗りを値下げしたのか

国土交通省は、初乗り運賃の見直しを求める事業者からの申請などを受け、平成29年3月30日から、東京のタクシー初乗りを380~410円に引き下げることに決定しました。東京都23区、武蔵野市、三鷹市など地域内の全てのタクシーに適応されます。運賃の値下げにより、短距離でもタクシーを利用してもらうことと、タクシードライバーの接客マナーやサービスの向上も同時に図っていく目的があります。

 

高額イメージを払拭する

この10年の間に、東京のタクシー利用者が年間で3割も減少しています。2007年に初乗り運賃が660円から710円へ引き上げられ、2014年に消費税が8%になると、タクシー初乗り運賃は730円に。一気にお客さまの足が遠のく原因になりました。特に東京23区の乗車運賃は他の地域と比べても高く、高額なイメージは都内の一般生活者だけでなく観光客にまで浸透していました。また、経済状況の影響もあり、業務上のタクシー利用は控える企業も多かったことでしょう。そこで国土交通省は、短距離の場合にもタクシーを利用してもらおうと初乗り料金を引き下げました。

 

初乗り距離を短くする意図

今までは初乗りが2kmからの設定になっていましたが、実際は2kmに満たない場所で下車しているお客さまが全体の3割近くいると調べで分かっています。今回、改定された初乗りの距離を短くするという決まりは、お客さまのニーズに応えることにもなっています。また、初乗りの距離を短くして運賃を値下げすることで、今まで利用する習慣のなかった人たちにも気軽に利用してもらいたいという目的があります。

 

タクシー初乗り運賃とその走行距離の仕組み

前回の初乗り運賃は2kmまで730円が上限になっていました。今回設定された初乗り運賃は1.052kmまで410円というもの。410円、400円、390円、380円の設定も可能で、それについてはタクシー会社が独自に決めていいことになっています。一見安くなったように見える運賃ですが、走行距離によっては以前よりも高くなる場合があります。なぜなら、短距離利用者によって見込まれる減収を、中長距離利用者の運賃の引き上げにより、タクシー会社全体の運賃収入が変わらない仕組みにしているからです。では、どのような仕組みになっているのでしょうか。

 

走行距離と運賃の仕組み

今回の改定では近距離であれば以前よりも値下げの運賃で利用することができますが、中長距離になると運賃が引き上げられる仕組みになっています。以前の運賃と比べてみます。

 

      1km   1.5km   2km  4km   9km   15km  30km

旧運賃  730円  730円  730円 1,450円 2,980円 4,960円  9,730円

新運賃  410円  570円  730円 1,450円 3,130円 5,130円 10,250円

 

例えば1kmであれば新運賃の方が320円安くなりますが、4kmで同じ金額に並び、30kmの時点では520円高くなることがわかります。

 

値下げ効果 ちょい乗り

全体的にタクシー利用者が減り、またタクシーは贅沢品だというイメージが定着しているなかで、タクシー初乗り運賃を下げることで、より多くの人に利用してもらいたいという目的があります。今までは近距離で利用する場合「少し距離が短くて申し訳ないのですが」などどいってタクシーを利用する人も多かったのではないでしょうか。また、タクシーに乗るなら歩くか電車に乗って節約しよう、という人もいたことでしょう。初乗り運賃を値下げし、距離を短く設定することでどのような客層にターゲットを広げたのでしょうか。

 

ちょい乗り利用 —タクシー利用の習慣がない人—

運賃の値下げにより、タクシーを利用する習慣のなかった客層にも利用してもらおうという目的があります。例えば雨が降ってきたけれど傘を持っていない、家までは歩いて10分ほどかかるけどコンビニで傘を買うとそれなりに高い。そんな時にタクシーが410円であれば乗ってみようと考える人は多いかもしれません。それがきっかけになり、普段もちょっとした用事で利用するという発想が生まれるようになり得ます。

 

ちょい乗り利用 —お年寄り—

お年寄りで足の悪い人や、重い荷物を持って歩くのが大変な人などが、気軽に利用できるようになります。普段の買い物や通院、習い事など、利用できる幅は広いのではないでしょうか。

 

ちょい乗り利用 —訪日外国人—

訪日外国人が増加するなか、初乗り運賃の設定距離が2kmというのは世界有数の長さです。そのため日本のタクシーは運賃が高いという印象を世界へ与えてしまっていました。新運賃の410円は、ロンドンやニューヨークと比べてもリーズナブルな料金になっていることから、もっと多くの訪日外国人に利用してもらうことが可能になると考えられています。

 

タクシーは高い、贅沢品、そのようなイメージを払拭するような改定が行われました。これからは、タクシーが長距離ではなく「ちょい乗り」利用にシフトされていくようになるかもしれません。

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