法的な問題や技術的な問題など、まだクリアしなくてはいけない課題が山積みのように見える「自動運転化」。ところが国は、早くも2020年代には自動走行システムの試用を開始するという指針を示しました。このことから、そう遠くない将来「自動運転化」が現実のものになると考えられています。
自動運転化で、タクシードライバーの未来は暗いと思われがちです。しかし実際のところ、タクシー業界にとっては追い風になるという意見が多いようです。なぜでしょうか。
タクシー業界にとって、「自動運転化」は追い風だという意見が多いようです。確かに「自動運転化」の最終目標は、ドライバーが乗務しない無人による自動車の走行と言えるでしょう。しかしそこへ到達するまでに、自動運転操作における安全対策が少しずつ進んでいくと考えられています。つまり、ドライバーが目視で確認しながら運転操作を行う部分をどんどん自動化しつつ、最終的にはドライバーのいない「自動運転化」へと到達するわけです。
完全な自動運転化になるまでは、当然ながらドライバーが運転席に必要です。完全自動化までの間、タクシードライバーは自分が受け持つ業務が徐々に削減されていく状況下でも、運転席に座り続ける必要があります。機械化される部分が増え、ドライバーにはより快適で安全な運転環境が与えられることになるわけです。
このような事情から、自動運転化の流れはしばらくの間タクシードライバーにとってプラスになると考えられています。DeNAロボットタクシーやグーグルカーなどでも、完全自動運転化が完成するまではテストスタッフやドライバーなど、多くのスタッフが係わってさまざまな安全実証の実験が行われています。
完全自動運転化に至るまでは運転補助レベルのドライバーが必要で、その間に事故率の低下やドライバーの負担が軽減されていくことは間違いありません。その点では、タクシー業界にとってもメリットがあるといえるのではないでしょうか。
タクシードライバーは、あくまでも接客業・サービス業です。そう考えるならば、人でなくてはできない業務、人だからこそ可能な業務は「自動運転化」にとって替わられるものではありません。超高齢化社会を迎え、高齢者への手厚いサポートなども人でなくてはできない業務といえます。
ただし「自動運転化」が完全に完成したら、格安の無人タクシーが登場するといった可能性はあるでしょう。その時は、サービスの良いタクシードライバーが運転するタクシーか、それとも格安の無人タクシーなのか、選択肢が二手に分かれるのではないでしょうか。そうなれば、これまでタクシードライバーが独占していたシェアが半分以上奪われることになります。その意味で、タクシードライバーにとって「完全自動運転化」は脅威であるといわざるを得ません。
無人のタクシーを運行させるためには、目的地まで最適な順路を選んで到達できる人工知能によるAIナビが必要になります。このAIナビの完成はかなりハードルが高いはずです。小さい子供からお年寄りまで、安全に乗車できて目的地まで送り届けること。それを可能にする人工知能は今のところ開発されていません。
無人タクシーよりも、同じコースを巡回して乗客を停留所で乗り降りさせる無人バスや無人列車の方が早く実現するのではないかと考えられています。日本は今後も超高齢化社会が続き、地方から都市部に人工が集中する傾向が高まるでしょう。そうなれば、都市部でのタクシーの需要はこれまで以上に増加するはずです。東京や仙台、札幌、名古屋、大阪、福岡などの大都市では、タクシードライバーの需要はこの先30年間は伸び続けると予想されます。
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