2017年に初乗り料金が安くなり、話題となった「ちょい乗りタクシー」。この「ちょい乗りタクシー」の登場で、私たちの生活はどのように便利になったのでしょうか。地方における「ちょい乗りタクシー」導入の動きや、その背景について詳しく見ていきます。
東京では23区と武蔵野市、三鷹市を営業区域とするタクシーで、初乗り料金が410円となっています。2016年までは初乗りが730円(2キロまで)でしたが、410円(1.052キロまで)に切り替わったことで気軽に利用できる「ちょい乗りタクシー」としてその便利さをアピールしています。
近所のちょっとした買い物に利用できたり、飲み会などで同僚と移動する際に少しの距離だけタクシーが利用できたりするようになったことで、タクシーを利用する人口が増加しています。実際のところ、2017年1月に「ちょい乗りタクシー」を導入して2週間後、1日1車あたりの運送回数は前年同期に比べて6.3%も増加。さらに、売り上げでは2.3%増加しています。
また、インバウンド需要の影響から海外からの観光客も多くなりましたが、海外から訪れる観光客からは「日本のタクシーは乗車料金が高い」という意見が大半でした。しかし「ちょい乗りタクシー」の登場で、「日本のタクシーは高い」というイメージが払拭できるかもしれません。
東京だけでなく、地方でもタクシー業界などが「ちょい乗りタクシー」への参入を要求する動きが高まっています。例えば京都では、初乗り運賃1.7キロまで610~550円(小型車)でした。しかし2018年からは、おおむね1キロ~1.2キロまで410円~450円の初乗り運賃に改定されます。※2018年4月1日より改定・実施
京都では、大手を含む複数の事業者が公定幅運賃の変更要請書を近畿運輸局に相次いで提出したことで改定する運びとなりました。京都市バスの均一区間運賃は230円となっており、2人で均一区間を移動する場合は「ちょい乗りタクシー」の方が安いということになります。そのため、新たな需要の掘り起こしが望めるのではないかと、タクシー業界は期待しているようです。
また、熱海でも「熱海ちょい乗りタクシー」に人気が集まっています。熱海の場合は狭い範囲に温泉や宿泊施設、飲食店などが集まっているため、観光客を中心にして「ちょい乗りタクシー」は大変重宝されています。
この10年間で、タクシーの利用客は約3割も減少しているといわれています。このため「ちょい乗りタクシー」導入の背景には、近距離利用の需要を掘り起こすことで乗客のタクシー離れを食い止めようという狙いが見られるでしょう。
京都でも短距離利用を喚起する狙いで、大手タクシー会社を含めた複数の事業者が近畿運輸局に対し、相次いで公定幅運賃の変更要請書を提出しました。公定幅運賃の変更を求める京都のタクシー事業者の合計台数は、全法人車両の半分近くにのぼっています。
近畿運輸局に対して公定幅運賃の変更要請書を提出したのは、彌榮自動車(京都市下京区)や都タクシー(南区)など。その後、両社のグループ会社や関西タクシー(山科区)、帝産京都自動車(南区)、京都相互タクシー(右京区)なども追随して、公定幅運賃の変更要請書を近畿運輸局に提出しました。
こうした動きの背景について、京都府タクシー協会は「インバウンド需要などで海外からの観光客が急増して混乱をきたしている市バスを補完することが目的である」としています。しかしほかにも、業界が抱える運転手不足という深刻な課題が影響しているのではないかと考えられているのです。
現在、京都タクシー業務センターに登録しているタクシードライバーは法人・個人を合わせて8,000名ほど。6年前から比べると2割近く減少しています。これについて京都府タクシー協会では、「タクシーの需要はたっぷりあるにもかかわらず、タクシーの供給が足りていない状況」との認識を明らかにしています。
「ちょい乗りタクシー」の導入では中長距離の料金が値上げになるため、売上の増収分で運転手の待遇改善、あるいは人員確保に当てようという目論見も考えられるでしょう。
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